私は自分が一番相手のことを理解しているという自信がありました。
だって、四六時中相手のことを考えて、こうすれば相手にとってもっと良くなるだろうという道が見えるんですから。
でも、相手はどんなに私が「こうすればいいよ!」と教えても、決して言うことを聞こうとしない。
そればかりか、相手の心はどんどん私から離れていってしまいます。
そして、どんどん私が言ったこととは真逆のことをして、私はまた相手のことを一生懸命考えます。
でも、私の思いは相手に伝わらず、相手の行動にイライラさせられたり、悲しくなったりして、私は相手のことを考えるのがやめられない。
私は、こんなことを繰り返してきました。
相手のことを一生懸命考えるのは、私の心の中に、相手と通じ合って理解し合いたい、仲良くしたいという気持ちがあったからです。
でもそんな私の願いは叶わず、「このままでは相手との関係がうまくいかない」という部分だけが、最終的に現実になっていました。
この私の例から見るすれ違いの面白いトリックは、ホルモン漬けの思考にあります。
ぐるぐると相手のことを考えている時の私は、「相手はこんなことを考えているはずだ!」と確信していました。
その時の私は、脳内からドバッと何らかのホルモンが出ているのを感じながら、そのホルモンによって不安になったり、怒ったり、落ち込んだり、
そして、時には相手のために自分がすべき行動がわかって、やる気を出したりもしていました。
でも、私が相手のために行動したり、アドバイスしたりすればするほど相手の顔が歪んでいくのは、私が脳内で思い描いていた相手の姿が、相手の本当の姿ではなかったから。
いろいろな絵の具が混じり合って複雑な色を出していくように、私はいろいろなホルモンを少しずつ出して、相手の姿を自分の複雑な色眼鏡で見ていたのです。
そう、つまり私は私の経験を通してしか相手の姿を見ていなかったということ。
自分の複雑な色眼鏡で相手を見てしまう私は、自分の知らない相手の姿を認めたくなかったのかもしれません。
自分の知らないところで、知らない経験をして、知らない考え方をする相手のことが見えていなかった。
私は誰よりも相手のことを理解していると信じていましたから。
でもそれは、私が脳内でたくさんのホルモンを出しながら作り出した虚像。
(※虚像:本当の姿とは異なる、作られたイメージ)
そう考えると、通じ合う経験をするためには別の方法があるのかもしれないことが見えてきます。
(つづく)
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