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本が読めなくなったのは、教育虐待によって心の傷が生じ、脳が炎症を起こしていたから。
でもまた買ってしまうのは、トラウマを再上演(※繰り返してしまうこと)して、幼いときに受けた心の傷を癒そうとしているから。
この人は自分の足りない知識を埋めるためにお金を使って、尊敬される人になろうとしていた。もう虐待されないように。
「私は、父に愛されたかったんですね。」
ポロポロと涙を流しながら、そうかそうか、と納得した様子で、その人は過去を振り返っています。
「先生が買い物依存と言った意味がわかりました。私は『自分は何も分からない子』という心の傷を癒すために、本や講座に依存していたんですね。
だから読みきれない、こなしきれない量を買ってたんだ。
確かに本や講座がなかったら、気がおかしくなっていたかもしれません。
それくらい、私にとってお守りのような存在だったと思います。
お金を使うことで、心の傷に正面から向き合わなくて済むように、自分自身を逃がしていたんですね」
うんうん、と言いながら、その人は続けます。
「それに、お金持ちになったら思う存分服を買って、旅行にも行きたいと思っていました。
私、おしゃれしたら母に『ダメよ。はしたない』って言われて、遊びに行くのも父に『勉強しなさい』って言われて行けなかったんです。
もしこのままお金持ちになれたとしても、また同じように自分の力量を超えてお金使ってただろうなあ。
そしたらいくら稼いでも『足りない』ままですよね…。
そっか、足りない足りないって思ってると、使いすぎちゃうんですね」
そう、とカウンセラーは心の中で呟きます。
自分のキャパシティを超えてお金を使ってしまうのは、何をしても満たされない欠乏感があるから。
その満たされない心をお金を使うことで満たそうとする。
この人の場合はそれが、聡明さだったんだ。
「あなたはとても賢いです。
賢いからお父様から嫉妬されて、『何も分からない子』という幻想を入れられたんですね。」
「嫉妬された…?私が?」
もう涙が止まっていたその人は、唐突な言葉に目が点になって、カウンセラーの言葉の続きを待っていました。
(つづく)
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