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私が大嶋先生から教わったことの中で最も印象に残っていることの一つは、心の傷は螺旋階段をのぼるように癒されていくということです。
トラウマ治療をしていくと、「またこれか」と思う出来事や悩みが何度も取り上げられます。
そして、何度も同じことに気づく、という現象が起きます。
私は都合がいいことを押し付けられるのに、私がお願いしたことはほとんど全部跳ね除けられる、ということに悩んでいました。
相手は正当な主張に、自分のわがままを混ぜて連絡してくるので、私はどこまでが自分が引き受けるべきお願いで、どこからが相手の身勝手なお願いなのかわからなくなり、混乱しました。
そして、心の中で少しモヤモヤしていても、これは聞いて当然なお願いだと思い込み、相手の願いを叶えてきました。
でも、私がお願いがあって連絡したら、全部「それは違いますよ」と言われ、私の主張はそんな思いを抱くこと自体が間違っているかのように扱われ、
その結果、全てが相手の思惑通りに進み、気づいたら私は身も心もぼろぼろになっていた。
そして私は、長い間このテーマに向き合うことにしました。
FAP療法で治療しながら、主張しすぎかもしれないと思っていた自分のお願いは、私のわがままなどではなく、むしろ聞いてもらえない方がおかしいことだと気づき、
向き合って数ヶ月後、私はこのテーマから解放されて、悩まなくてよくなりました。
相手と関わらなくて良くなったからです。
相手からの圧が強すぎて、絶対に逃げられないと思っていたのですが、私の心の中に相手がいなくなった瞬間、目の前がパーッと開けていくのを無意識で感じ、私が何かしなくても、自然な流れで相手と関わらなくて良くなったんです。
まるで、私が通るための道を開けてくれたかのようでした。(あれは本当に不思議な体験だった)
そして、私はまた日々の生活の中で出てくる「旬の悩み」に向き合うことになり、このテーマからは離れました。
1年後、私は別の状況下で、自分がお願いしたことに返事が返ってこない、ということで悩んでいました。
結果としてYESの返事が来たのですが、この悩みに向き合っていた時に、1年前にも同じようなことで悩んでいたことに気づいたんです。
そう、私は1年の時を経て、「自分のお願いが通らないかもしれない」という同じ悩みに辿り着いた。
ですが、その中身をよく見てみると、この1年間で、「都合がいいことを押し付けられるのに、私がお願いしたことはほとんど全部跳ね除けられる」という悩みが、「自分がお願いしたことに返事が返ってこないことが不安」という悩みに発展していったのです。
FAP療法をしながら気づいたことに関しても同じで、「自分の意見は主張していい」と同じことに気づいたのですが、
その中身は、「主張しすぎかもしれないと思っていた自分のお願いは、私のわがままなどではなく、むしろ聞いてもらえない方がおかしい」ということから、「自分が意見する時に、不安になる必要はない」というふうに変化しました。
そう、その過程はまるで螺旋階段のよう。
同じところをぐるぐる回っているようで、じつは上へと登っているんです。

心の傷の治療は、螺旋階段のように円を描きながら進むので、同じところへ帰ってきたように思えるのですが、前にその場所にいた頃よりも、はるかに高い視座で物事を見ることができるようになります。
螺旋階段を登りながら、私の自分の意見を主張する時の悩みは、より自分らしく振る舞える方向に向かって進化していきました。
大嶋先生は私に、「同じことで悩んでも、ちゃんと前に進んでいますよ」と教えてくれた。
私はその言葉を胸に、同じことで悩んだら、前に悩んでいた時よりも高いところまで進んできた自分のことを、褒めてあげたくなります。
(つづく)
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