お金に関する問題で、収支が合わないのは心の傷です。
前回は買い物依存症に関して解説しました。
ここでもう一度、お金を使いすぎることに関して解説します。
ちょっと待ってよ、使いすぎることはもう分かったから早くお金が入ってくる方の解説を…と思われるかもしれませんが、
この「使いすぎてしまう」行動の奥に隠された痛みが、お金が入ってくることを阻止しています。
つまり、本来入ってくるために使えるはずのエネルギー(体力や労力など)が、出ていく方に流れてしまっているということです。
なのでまずは出ていく方、お金を使ってしまう行動についてしっかり見ていきたいと思います。
お金の悩みを抱えている人の場合、お金を使う行動は発作的である可能性が高いです。
発作的、つまり記憶が飛んだり自分の都合の良いように記憶が編集されたりしているので、なぜお金がこんなにもなくなっていくのかが認識できません。
これには想像力のホルモンであるドーパミンが関係しています。
商品を購入する前にドーパミンが分泌されると、「この商品を買った後の自分」を想像します。
ドーパミンは幸せホルモンでもあるので、分泌されると幸せを感じられます。
つまり、「これを買えば自分の人生はきっとうまくいく(=幸せになれる)」と感じて買っているということです。
ですがそれはあくまでもドーパミンによる想像であるため、思考がフワフワしていて、自分が思っているよりもお金を使いすぎているということに気づけません。
そして、後日カードの引き落とし額や口座の残高を見た時、「こんなに使ったっけ?」と思ってしまい、「なぜかお金が出ていく」と悩む羽目になるのです。
そしてドーパミンは、報酬が得られた時よりも得られる前の方が分泌量が多いため、せっかく買ったのに見向きもしないということも多いかもしれません。
やはり購入する瞬間が一番幸せなのです。
では、なぜお金が出ていく時に発作的になってしまうのでしょうか?
それは、2つの条件付けが関係しています。
1つは、お金を使ってしまうものに対する条件付け。
今回見てきたケースでは、「無知である自分」という心の傷があるので、知性を象徴する「本」や「講座」に条件付けされていました。
この人の場合、「もっと勉強しろ」と叱られた時に、手元に「本(教科書など)」があった可能性があります。
また、塾に通っていた、習い事をさせられていた、学校の授業の通信簿で叱られたなど、何か「教わること」に条件付けされた場合は「講座」に条件付けされます。
このように、お金を使いすぎてしまうものに何かしらの心の傷が条件付けされています。
例えば「食べ物」についお金を使ってしまう場合、どのようなお金の使い方をしているかを振り返ってみましょう。
自分が今すぐ食べるためのご飯やおやつなどにお金をかけ、つい食べ過ぎてしまう理由は、「体型」や「容姿」に心の傷があるのかもしれません。
一方で、未来に食べるための「備蓄する食べ物」を必要以上に買い込んで賞味期限を切らしてしまうことが多い場合は、「貧乏」に心の傷があるのかもしれません。
あるいはその両方か、他の心の傷が隠れている可能性もあります。
(ちなみに、過食もドーパミンが関係しています)
どのような心の傷があって、どのようなものにお金を使い過ぎているのかという組み合わせには、育ってきた家庭の数だけ、心の傷の数だけバリエーションがあると思います。
なので、一概に上記の例が当てはまらないかもしれませんが、何かしらの心の傷が隠れているということは断言できます。
また、もう1つの条件付けは「お金」そのものです。
幼い頃に経済的に逼迫していたなど「お金」にまつわるストレスがあった場合、発作が起きる条件が「お金」になってしまいます。
発作とは破壊的な人格になるということ。
何が条件付けされているかによって、破壊的になってしまう場面が変わってきます。
原家族でお金関係で心の傷を作った場合は、破壊的人格になるスイッチが「お金」にある、ということです。
お金で破壊的な人格になる分かりやすい例として、大嶋信頼先生の『それ、あなたのトラウマちゃんのせいかも?』に出てきたケースをご紹介します。
(ブログの最後にURLを記載しておきます)
ギャンブルなどではなく、食事代や女性とのデート代で借金がかさんでしまっている男性のケースです。
このケースの男性は、女性に頼まれた高いレストランの予約を、「いつかお給料が上がったらね!」と約束したつもりでしたが、
後日予約していないことを咎められ、「私のことなんかどうでも良いと思っている!」と言われてしまいます。
男性は「今はそんなお金がないから!」と女性にちゃんと伝えているのに、女性は「私のことなんかどうでも良いと思っている!」と電話口で怒鳴り出す。
大嶋信頼先生著『それ、あなたのトラウマちゃんのせいかも? あなただけの簡単な言葉を唱えるだけで”いまここ”で楽になる!』p.74より
(中略)
女性が「死んでやる!」と怒鳴りだすので、男性は慌てて「ちゃんとレストランは予約するから!」と言ってしまい、結局、借金をしてそのレストランを予約する。
彼女を宥める電話は週に4〜5日、夜中2〜3時まで続き、体が動かなくなった男性は、お金がないのに仕事に行けないという状況を繰り返して借金がかさんでしまいます。
この男性は、高校生の頃父親が母親のことを罵倒し続けてしまって、母親が寝たきりになっていました。
そして、その体験がお金を使ってしまうトラウマの原体験だったのです。
男性の母親は、罵倒されて泣きながら父親に「死んでやる!」という言葉を発していた可能性がありました。
その「死んでやる!」という言葉がきっかけとなって、男性は発作的にお金を使ってしまうことになるのです。
そして、そのような混乱のきっかけがお金だったのです。
高校の頃の母親が寝たきりになったきっかけの父親が切れた原因が「お金」だったことから、「お金」も男性のトラウマのキーワードとなっており、トラウマの再上演で「お金を無駄に使う」ということを繰り返していたと考えられた。
同上 p.80より
これは本に書いている内容ではなく、私の勝手な憶測ですが、男性の父親が母親にキレたということは、父親が母親のお金の使い方に対して何か不満を持っていた可能性があります。
それが女性とのデート代として現れているのかもしれません。
いずれにせよ、「お金」がトラウマを呼び起こし、破壊的な人格となって必要以上に使い過ぎてしまっています。
お金を使い過ぎてしまうのは「お金を使い過ぎてしまう対象」、そして「お金」そのものに対する条件付けだと説明してきましたが、
ここまで見てきたようにそのどちらもが発作的なものなので、反省してなんとかなるものではありません。
自分のお金の使い過ぎを反省して神経質に家計簿をつけたり、お金の講座を受けたりして一時的に経済が上向いて喜んでいたら、
トラウマの条件付けが呼び起こされるような状況で発作的に使ってしまって逆戻りしてしまったという経験がある人もいるかもしれません。
お金が出ていき過ぎることを防ぐ第一歩は、発作的な場面で心の傷が条件付けされていることに気づくことです。
ドーパミンは「心の傷を見たくない」という解離ベースの条件付けだと依存症をもたらすホルモンですが、
現実的で生産的なものに条件付けされた場合、やる気を引き出してくれて、仕事でレベルアップするにはもってこいのホルモンです。
つまりお金を使ってしまう状況で、条件づけられた痛みを認識し、現実を見られるようになると、その条件付けが不要になるのでお金を稼ぐための条件付けに変えられるということです。
これが冒頭でまずはお金が出ていく方から見ていく必要がある、と述べた理由でもあります。
お金を使いたくなる場面で、「これを買って幸せになれる(嫌な状況がなんとかなる)と思っているのは幻想だ」と気づくことは、現実を認識できた(地に足がついた)と言えます。
そうすれば、ドーパミンの乱高下が抑えられ、お金を使わなくても幸せになれる道筋が見えてくるのかもしれません。
(つづく)
<参考>
ブログで紹介させていただいた、大嶋先生の本です。
トラウマについて書かれています。
大嶋先生の本をたくさん読まれている方に、一番好きな本は?と質問すると、この本を挙げる方が多い印象です。
とてもおすすめです。
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