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普通だったら「お金を稼ぐために投資して勉強しているんです」と言われたら、「とても勤勉な方なんですね」となって、「いつか稼げるように頑張ってくださいね」となるのかもしれない。
でも、この人は読みきれない量の本を購入したり、こなしきれないほど講座に追われたりしているのに、まだ足りないと思っている。
ということは、ここに心の傷がある、とカウンセラーは考えていました。
「たくさん学んだら、ご自身はどうなれると思いますか?」
「そりゃ、とても立派な人間になれると思いますよ。
教養が深くて、品があって、私の理想とする人物です。」
だから、私は営業職なんですけど、交渉スキル講座以外にマナー講座やロジカルシンキング講座の勉強も怠らないんです。
昨日ちょうどビジネスメール講座で、自分の知らない表現を知って恥ずかしい思いをしたところでした。プレゼンテーションやマーケティングも学ばなくちゃいけないんですけどね。
えへへ、と笑うその人に、カウンセラーは真剣な眼差しで質問を投げかけます。
「ということは、たくさん学んで得たいものは、お金以外のものもあるんですね?」
「それはもちろん!!
だって、教養が深くて品があれば、みんなから尊敬される人になれますよね?」
あれ?、とその人は、何かが込み上がってくる感覚とともに目頭が熱くなったことに驚き、自分の中で何かを掘り当てた感覚を感じました。
「尊敬される人になりたいと思われていたんですね。今、どなたか顔が浮かぶ人はいますか?」
「父です。父の顔が浮かびます。
勉強がわからない時、いつも『どうしてお前はこんなことも分からないんだ!』と怒鳴られていました。」
無意識に流れる涙と一緒に、その人は痛みを吐き出します。
幼い頃から、厳しい躾を受けてきた。
礼儀に厳しく、いつも品がない、この家の恥だと言われてきた。
勉強面では、父親と一緒に勉強する時間が苦痛だった。
受験生の時期に父親が期待する学校に受からなかった。父親の怒った顔と、母親のがっかりした顔が忘れられない。
読書が好きで、本だけが安心できる場所だったのに、前よりも早く読めなくなって溜めてしまう。
なのに、「学ばなくちゃ」という気持ちが先走って、ついまた買ってしまう。
「あなたは、お父さんに認めてもらいたかったんですね」
溢れる涙をハンカチで拭いながら、そうかもしれない、とその人は感じていました。
(つづく)
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